「その植物、どこから来た?」―植物の違法採取と、私たち愛好家が考えたいこと【CITESとは?】

↪︎ 最終更新 2026年 8月 30日

珍しい植物を手に入れると、まずは「珍しい」「形がいい」「ワイルドで格好いい」といった魅力に目が向きます。

アガベ、パキポディウム、オペルクリカリア・パキプス、ティランジア、サボテンなどは、野生個体ならではの姿が人気です。

しかし、その植物がどこで採取され、どのような経路で自分の手元に来たのかを考えたことはあるでしょうか。

近年は、SNSやオンラインマーケットを通じて、希少な植物が国境を越えて売買されています。KewとTRAFFICも、SNSやネット通販が、違法な野生植物取引の経路になっていると指摘しています。(キュー植物園)

「違法採取」と「野生採取」は同じではない

野生採取そのものが、すべて悪いわけではありません。

決められたルールを守って行われる採取は、地域の人々の収入を支えることもあります。

問題なのは、自然が回復できないほど採取することです。また、法律や国際条約に違反して、採取・輸送・販売することも問題です。

希少な植物では、成長した株を大量に採ることで、種子を残す個体が減ることがあります。その結果、次の世代の植物が育たなくなる可能性もあります。

CITESは「珍しい植物を売ってはいけない」という法律ではない

CITES(ワシントン条約)は、絶滅のおそれがある野生動植物を守るため、国際取引を規制する条約です。

CITESに掲載されている植物が、すべて売買禁止というわけではありません。附属書IIに掲載されている種などは、必要な許可や手続きを行えば、取引できる場合があります。(経済産業省)

大切なのは、CITESの対象かどうかだけでなく、決められた手続きを守っているかです。

CITESとは?

植物の違法採取や国際取引について調べると、「CITES(サイテス)」という言葉が出てきます。

CITESは、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といい、日本では「ワシントン条約」と呼ばれています。

簡単に言えば、野生動植物が国際取引によって絶滅することを防ぐため、輸出入を規制する国際条約です。

CITESには3つの附属書があり、特に絶滅のおそれが高い種ほど厳しく規制されています。

ただし、CITESに掲載されている植物=すべて売買禁止、というわけではありません。附属書Ⅱなどでは、必要な許可や手続きを行えば国際取引が認められる場合があります。

また、CITESの対象外だからといって、自由に採取・輸出できるわけでもありません。原産国の法律によって採取や輸出が規制されている場合もあります。

つまり植物を海外から購入するときは、「CITESに載っているか」だけでなく、「合法的に採取・輸出されたものなのか」まで確認することが大切です。

アガベやパキポディウムも他人事ではない

アガベは、すべての種がCITESの対象というわけではありません。しかし、Agave victoriae-reginae(笹の雪)など、規制されている種があります。

メキシコでは、無許可で販売されていた同種の株が34株押収された事例もあります。(メキシコ政府)

パキポディウム属も一部が、CITES附属書IIに掲載されています。

特にマダガスカル産の植物は、野生個体ならではの独特な姿が魅力です。そのため、「ワイルドだから価値がある」と評価されることがあります。

しかし、ワイルド株に高い価値がつくほど、野生個体を採取しようとする動機も強くなります。

過去には、人工繁殖個体として申告された植物が、実際には野生採取だったと考えられる事例も記録されています。(CITES)

また名前を書き換えて仕入れられているケースも耳にします。

オペルクリカリア・パキプスも、CITESで重要な取引の検討対象となっています。原産地のマダガスカルでは、密猟や森林破壊が生物多様性への大きな脅威となっています。(CITES)

また、調査してみると非常に面白い事実があります。植物の違法取引は、動物の密猟に比べて研究・報道が少ない一方、実際にはかなり大きな問題です。2025年のINTERPOLの「Operation Thunder」では134か国が参加し、保護対象の植物・動物を含む4,640件の押収が行われました。

さらに2022年の多肉植物愛好家441人を対象とした研究では、約12%が何らかの違法取引に関与したと推定されています。 そして2026年に発表された研究では、違法輸入を経験した多肉植物愛好家への聞き取りから、「高くて買えないから違法ルートを選ぶ」という経済的動機も確認されています。

ティランジアにも関係する問題

ティランジアも、過去には野生採取された株の国際取引が問題になってきました。現在も、一部の種はCITES附属書IIに掲載されています。

「ティランジアだから大丈夫」「海外から送れる植物だから問題ない」とは限りません。

植物の種類によって規制は異なります。海外から購入するときは、その種にどのようなルールがあるのか確認する必要があります。

「買う人がいるから、採る人がいる」

違法採取をする人だけを責めても、問題は解決しません。

なぜなら、そこには植物を欲しがる人、つまり需要があるからです。

「野生だから格好いい」

「現地球だから価値が高い」

という評価が、野生個体の採取を促すこともあります。

もちろん、合法だと思って購入した人まで、一律に責めるべきではありません。

大切なのは、購入する前に、その植物がどこから来たのかを確認する習慣を持つことです。私たちにできること

植物を購入するときは、次の点を確認してみましょう。

  • ワイルド株なのか、実生・人工繁殖株なのか
  • どの国や地域から来たのか
  • 必要な許可や検査を受けているのか
  • CITESだけでなく、原産国の法律にも違反していないか
  • 希少な植物なのに、極端に安くないか

販売者に聞いても説明があいまいな場合は、注意が必要です。

また、「ワイルドだから高い」という価値観だけでなく、実生株や国内で繁殖された株にも価値を見いだすことが大切です。

そうした選択が、野生個体への需要を減らすことにつながります。

植物を好きだからこそ、考えたい

植物を集めることや、ワイルド株に魅力を感じること自体が悪いわけではありません。

大切なのは、その植物がどこから来たのか、どのような経路を通って手元に来たのかを考えることです。

そして、その流通が自生地を守ることにつながっているのかを考えることも必要です。

次に植物を買うときは、「珍しい植物だ」と思うだけでなく、

「この植物は、どこから来たんだろう?」

と一度考えてみてください。

植物が好きだからこそ、手に入れることだけでなく、未来に残すことまで考えられる愛好家でありたいと思います。

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