こんにちは、チラグラファー・愛好家の【wanchan(わんちゃん)】です。
植物の世界では、色素体の異常などによって出る葉の模様の事を【斑(ふ)】と呼びます。
ティランジア(チランジア)の【斑入り】(読み方:ふいり)個体は非常に希少です。
イオナンタを除く斑入り個体は、斑の入り方次第では数十万円以上の高値で取引される、まさに高値高嶺の花…。
そもそも斑入りとは
まず、予備知識としてwiki先生より。
斑入りとは、植物おいてもともと単色で構成さる組織が、本来持っているべき色、つまり緑色の葉の一部が白や黄色あるいは赤の模様になることを指すことが多い。この白や黄色あるいは赤の模様を斑という。外的または遺伝的要因によって多色になってしまう場合をいう。多くは葉に見られる。
Wikipedia
斑は植物全般に見られる変異です。その美しさから園芸品種として鑑賞価値が高く、古くから珍重されています。
ただ、白抜けの部分は葉緑体が少なく、光合成の能力が低いので通常の品種よりも成長が遅く、また貧弱である場合があります。
トリコームが濃い品種は水に濡らすと斑がよりはっきりと分かります。
斑の種類
- バリエガータ(ヴァリエガータ)
- マルギナータ(マージナータ)
- メディオピクタ
ティランジアに見られる主な斑の種類は上記の3つです。
※イオナンタ以外の斑入りは全部まとめてvariegatedと記載される事が多いです。
斑入りの個体は、基本的に親株と同じパターンの斑入りの子株を付けますが、稀に別の種類の斑入りの子株を付けたり、斑なしの子株を付けたりすることがあります。
この他には、葉や株の半分だけに斑が入る「ハーフムーン(切斑)」や、真っ白の「うぶ斑/幽霊斑(オバケ)」などがあります。後者は葉緑体がほとんど無く、栄養を作り出せないので親株にくっついてないと枯れてしまいます。
また成長点付近だけが白く色抜けする「曙斑(あけぼのふ)」と呼ばれる斑もあります。
これは子斑が出た時から色抜けしているパターンと、生育途中に成長点付近が色抜けしていくパターンがあります。いずれの場合も時間が経つにつれ、葉の上の方から徐々に緑色に色付いてきます。
上記で紹介した斑入りはどれも次世代への遺伝が確認されていますが、斑の入りの強さなどにより子株に遺伝しない場合もあります。
ちなみに「曙」は斑の模様ではなく、斑の状態が時間とともに変化する様子を表しており、夜明けの色の変化に例えられています。なんだか素敵ですよね。
斑入りのティランジア紹介
まずはとっておきの斑入りティランジアからご紹介します。
Tillandsia ‘Deborah Ann’
デボラ・アンは、故・ハリー・ルーサー氏がメキシコ~ガテマラで野生採取したカピタータ類似種(Tillandsia aff. capitata) の実生株から現れた斑入り個体です。
はっきりとした縞斑が非常に美しく、日本のみならず海外でも入手が困難。
最高峰の美しさを持つ斑入りティランジアとして、世界中のマニア達を魅了しています。
▼より詳しくはこちら
Tillandsia ‘Solar Glow’
こちらは日本ブロメリア協会の会長である滝沢氏が所有する「ティランジア ‘ソーラー グロー’」(Variegated form of Tillandsia duratii v. saxatilis)。
※写真は滝沢会長の許可を得て掲載しております
この株はドゥラティの中斑入り個体で、黄色く輝くような姿からこの名前が名付けられました。2015年に国際品種登録されています。[BCR 12975]
美しすぎて言葉が出ませんね。
この奇跡のドゥティは野生採集された株の中から、故•佐々木淳(たゆみま)氏により発見され、滝沢氏により増殖されたもので、日本発の品種になります。
より詳しく見たい方は滝沢会長のインスタグラムをご確認ください。
こちらからソーラーグローの動画をご覧いただけます。
Tillandsia ‘Hawaiian Classic’
こちらの品種はハワイのティランジア栽培家、Jerry Domingo(ジェリー・ドミンゴ)氏が選抜した、トリコロールの斑入り個体です。この株は通常のトリコロールから子株として出てきたオフセットで、2008年頃にドミンゴさんに発見され増やされました。その後2023年7月にBCRに記載されています。
▼詳しくはこちら
Tillandsia ‘Charles Wiley’ Variegata
こちらは日本ブロメリア協会の幹事である柿澤氏が所有する「ティランジア ‘チャールズワイリー’」。
※写真は柿澤氏の許可を得て掲載しております
これはTillandsia ‘Charles Wiley’の子株から突然変異で出て来た物を固定したものだそう。白抜けの多い完璧な斑入り株ですね。 今後はこれを増殖していく予定だそうです。
驚くほど美しい株ですよね。
柿澤氏のインスタグラムではたくさんの素晴らしい株が紹介されていますので、是非チェックしてみてくださいね。
Tillandsia ‘Extravagance’
「ティランジア・エクストラヴァガンス」は米国のTropiflora(トロピフローラ)社がTillandsia Elisa (concolor × streptophyla)から選抜した斑入り個体です。クリーム色の斑が特徴的であり、斑の入り幅が広く非常に観賞価値が高いです。2023年にBCRに記載されました。
米国内でもほぼ流通しておらず、残念ながら日本で手に入れるのはかなり難しい激レア品種になります。
※生育株の写真はTropiflora様より許可を得て掲載しています。
※子株の写真はGood Field様よりご提供いただきました。
Tillandsia brachycaulos x streptophylla Variegata
台湾のナーセリーから来た「ティランジア ブラキカウロス×ストレプトフィラ」のヴァリエガータの子株。薄いながらも縞斑が見られます。
斑が弱い個体は強光下の環境だと、斑が飛ぶ事があります。斑を安定させるためにあえて暗めの環境で管理するなど注意が必要です。
また、成長するにつれ斑が強くなる場合もあります。
Tillandsia ‘Eric Knobloch’ Variegata
こちらは先ほどと同交配の登録品種「ティランジア‘エリックノブロック’(ブラキカウロス×ストレプトフィラ)」のバリエガータ個体です。思わず見惚れてしまうほどの美しさですよね。
同じバリエガータでも斑がこれだけはっきり出る個体は、子株でも10万円以上になります。
※写真は ryo_201 さんよりご提供いただきました
Tillandsia vanhyningii Variegata
有茎種の「バンハイニンギー」のヴァリエガータ個体です。こちらも圧巻の美しさですよね。
※写真は ryosuke@SUS さんよりご提供いただきました
Tillandsia ‘Curly Slim’ Variegata
うっすらと斑の入ったティランジア・カーリースリムです。
Tillandsia multicaulis Variegata
珍しい斑入りのティランジア・ムルチカウリス。
綺麗なライムグリーンに真っ白のラインが入った個体です。トリコームがほとんどない緑葉種なので斑がはっきりと確認できます。
水好き緑葉タンクタイプなので、樹皮コルクに水苔で仕立てました。
ティランジア・ムルチカウリスは【multi + caulis】は 【たくさんの + 茎】という意味のラテン語で、ティランジアとしては珍しい、複数の花序を出して開花する品種です。
Tillandsia ionantha ‘Variegata’
縞模様が美しい「イオナンタ ‘ヴァリエガータ’」。斑入りティランジアの中では最も手に入れやすい品種になります。
Tillandsia ionantha ‘Albomarginata’
イオナンタの斑入りの中でも人気の「イオナンタ ‘アルボマルギナータ’」。こちらは葉の外側にラインが入るタイプです。
Tillandsia ionantha ‘Mediopicta’
写真提供:えぬ(@n_enu_7)さん / X
「イオナンタ ‘メディオピクタ’」は葉の中央部分に斑が入っているタイプです。アガベなどてはよく見られる斑の入り方ですね。
メディオピクタはアルボマルギナータよりさらに葉緑体が少なく、成長が成長がより遅いです。
あまり流通していないので、欲しい方はアルボの子株として出るのを待つのが近道です。
▼メディオピクタの作り方はこちら
Tillandsia ionantha ‘Albomarginata’ Half Moon Type
写真提供:yuka(@marb.le10)さん / Instagram
こちらは半分だけ白抜けするハーフムーンです。片方はメディオピクタのように白くなり、もう片方はバリエガータのように縞斑になっています。
「イオナンタ ‘アルボマルギナータ’のハーフムーンタイプ」と表記される事が多いようです。
Tillandsia ionantha 曙斑
「イオナンタ 」の曙斑の個体です。色抜けのグラデーションが本当に美しいですね。おそらく通常のイオナンタの斑入りの中では最も手に入れにくいタイプになります。
この株は親株の性質を受け継ぎ、最初から斑入りで生まれてきました。
この変異は葉緑体の発達が葉の伸長に追いつかないために発生する斑です。そのため小さいうちに株分けされたこの個体の場合、成長速度が遅く緑化が追いついてしまい斑が消えてしまいました。
この株が大きくなった時、もしくは子株が出た時にまた曙斑が見られるかもしれません。
斑を子株に遺伝させるコツ
斑が乗っている部分から子株が出ると、その子株も斑入りになります。斑が少ない親株の場合子株に斑が遺伝子ない場合もありますので、そんな時は以下の方法をお試しください。
▼詳しくはこちらで解説
ちなみに曙斑の場合は、子株が出る場所に関わらず遺伝する事が多いようです。
最後に
なかなか手に入れにくい斑入りのティランジアですが、イオンモールの生花店でキセログラフィカの斑入り個体を見つけたなんて方もいるみたいなので、皆さんも探してみてくださいね。
それでは今回はこの辺で。
▼イオナンタの斑入りについて詳しくはこちら
▼まだまだありますティランジアの突然変異
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▼分からない言葉はありませんでしたか?
ティランジアの専門用語、全部まとめました。
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