同じ交配なのに名前が違う⁉︎ティランジア業界が抱える闇

チランジアの交配名について

こんにちは、チラグラファー・愛好家の【wanchan(わんちゃん)】です。

「同じ交配なのに何で交配名が付いてる品種と、付いていない品種があるんだろう?」と思ったことはありませんか?

この記事ではその謎について解説していきます。

本題に入る前にまずはティランジアの分類についておさらいしておきます。

ティランジは2つに分類される

1 原種

チランジア・キセログラフィカの花芽

他の種と交配されていない純粋な品種を「原種」と呼びます。なんと600種以上が確認されています。

(例) Tillandsia xerographica

2 交配種

ティランジア・カーリースリムのアイキャッチ画像

特定の2品種を交配させて生み出された品種を「交配種」と呼びます。

ティランジア・カーリースリムのように、【交配名が付けられ品種登録されている交配種】もあれば、【交配名が付いているけど品種品種登録されていない交配種】や、そもそも【名前が付けられていない交配種】も存在します。これらをまとめて「栽培(園芸)品種※」と呼んだりもします。

名無しの場合、Tillandsia ○○○×●●●と表記され、前半にめしべ側となる母親(種子親)、後半におしべ側となる父親(花粉親)が記載されます。

(例) Tillandsia streptophylla×novakii

交配種は世界中で常に新しいものが生み出されており、名無しのものも含めると2000種以上存在すると言われています。

※栽培(園芸)品種とは

栽培環境下や野生から選抜された優れた特徴を持つ原種や、交配種を「栽培品種」と呼び、名前が付けられることがあります。その性質は子株(クローン)に受け継がれる事が確認されていなければなりません。基本的には3F(3世代目)までその性質が維持されるのを確認して品種登録されますが、守られていない場合もあります。

原種の栽培品種は【Tillandsia ●●● ‘○○○’】と表記され、前半の●に上位の品種名、後半の○に単一引用符(‘ ’)で囲んだ形で栽培品種小名が表記されます。

(例) Tillandsia ionantha ‘Fuego’ 

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交配名は標本個体とそのクローンだけ

ティランジアフォーグレーターグローリーのアイキャッチ画像

ティランジアの中には同じ交配親なのに、交配名が付いているものと付いていないものがあります。

例えばブラキカウロスストレプトフィラの交配種は以下のように表記されているのを目にします。

  • ティランジア・エリックノブロック
  • ティランジア・ブラキカウロス×ストレプトフィラ

なぜこんな事が起こるのかと言うと…ティランジアの世界では交配名は、BCR(国際ブロメリア協会による品種リスト)に登録された一株だけに与えらえるからです。またその交配名で呼ぶ事ができるのは、登録された標本株+同じ遺伝子を持つクローン(子株)だけという事になります。

要は、どこかの誰かがブラキカウロスとストレプトフィラを掛け合わせても、その株をエリックノブロックとは呼べないという事です。

さらに言うと、品種登録された株と同じ親から実生で生まれてきた兄弟株(グレックス)についても、同じ交配名では呼ぶことはできません。これは人間と同じで兄弟でも個体差が大きく出てしまうためです。

交配名はあくまで、オリジナルの一株とそのクローン(子株)だけを指しているんですね。

ちなみに登録品種のエリックノブロックは、無名のブラキ×ストレプと比べ、葉のエッジが赤くなる特徴があります。

チランジア キセログラフィカ×カピタータの株分け

これは、交配種だけでなく原種の栽培品種についても同様です。

ちなみにBCRには登録せず、ナーセリーがオリジナルで交配名や栽培品種名をつけて販売していることもあります。

同じ交配でも違う交配名が付く事も

上記の理由から、同じ品種の交配でも、<異なる特性を持った個体>として別の交配名が付けられて登録される場合もあります。

例えばブラキカウロスストレプトフィラの交配種には、エリックノブロックという交配名をもつ品種の他に

  • Tillandsia Bauple(バウプル)
チランジア・バウプル

という交配名を持つ品種が存在します。親株の種類は同じでも遺伝子が違うのでエリックノブロックとはかなり見た目が違います。少しややこしいですよね。

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現実は兄弟株も同じ名前で売られている闇

命名法に則り、品種登録した個体を子株のみで増殖させ販売ルートに乗せるには非常に時間がかかってしまいます。

そこで、アメリカのナーセリーを中心に行われているのが、同じ系統の兄弟株(グレックス)や、兄弟同士を交配させて実生で得られた株(F2株)全体に対して交配名を与えて、実生で大量生産して売るというやり方です。

当たり外れがある

このやり方だと新品種をスピーディーに生産できる反面、ある程度性質は似ていたとしても遺伝子的には違う株になるのでどうしても個体差が出てしまいます。

ウェブサイトやSNSなどに上がっている写真に惹かれて育ててみたものの「期待通りの花が咲かない」「まったくの別物」なんて事が起きるのはこれが原因です。

本当に優れた・美しい株を手に入れるには、複数株購入して当たりを引くか自分で選抜を重ねる必要がありますね。

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“本物”を手に入れるには

国際プロメリア協会のBCRに品種登録されているのと同じ交配種や栽培品種、もしくは優れた特性を持つ原種が欲しければ作出・発見した人に分けてもらうか、由来のはっきりしたもの買うしかありません。

信用のあるお店から買う

オリジナルのクローンと断定されている個体には【type clone(タイプクローン)】であったり【original clone(オリジナルクローン)】の表記がある事もありますので、それを目印にしてもいいでしょう。

ただ正直なところタグは簡単に偽造できてしまう上、株が小さいうちは判別することは不可能なので、本物にこだわる方は信用のある所から買うしかありません。

信用のある優良株と言えば、日本ブロメリア協会会長の滝沢氏が出しているコレクション【T’s tropical】が有名です。交配種のオリジナルクローンや、優良原種の選抜株・栽培品種のレアクローンの取り扱いがあり、タグにしっかりと記載があります。また優良株のグレックスの場合はその情報もしっかり明記されています。

ちなみに滝沢会長のティランジアは“会長株”と呼ばれ、市場では信用のある株として扱われています。

初めの頃は『由緒正しい株』だとか、『由来のしっかりした株』と聞いても、「結局は同じ品種でしょ?」と胡散臭さを感じていましたが、どうやらそんな事はないみたいです。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

同じ品種の交配でも違う名前が付いていたり、逆に同じ名前でも全く違う特徴をもつ個体が出回ったりしているのがティランジアの世界です。

皆様もティランジアを選ぶときには名前だけでなく、その由来にも着目してみてはいかがでしたでしょうか。

それでは今回はこの辺で。

▼亜属の分類についてはこちらで解説

▼山採り株の危険性について解説しています

▼呼び方についての疑問はちらで解決

▼受粉・交配のやり方はこちらの記事にまとめました

▼エアプランツの基本的な育て方はこちら

▼分からない言葉はありませんでしたか?

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